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大宅壮一さんのこと(前編)

 投稿者:矢嶋武弘  投稿日:2010年 7月 9日(金)10時17分3秒
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  先日、ある方のブログを訪問したら、昭和の大評論家・大宅壮一氏の有名な言葉「一億総白痴化」の話が出ていた。この言葉は1957年(昭和32年)に、大宅氏が「テレビというのは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると一億総白痴化になる」といった趣旨で述べたと伝えられている。
詳しいことは分からないが、この「一億総白痴化」というフレーズはとても有名になり、テレビを論じる時は長く使われた。調べてみると、同じ頃に作家の松本清張氏もテレビについて「かくて将来、日本人一億が総白痴となりかねない」と述べたと言われる。 とにかく、テレビ初期の時代は余りにも低俗な番組が多く(今でもそうかもしれないが)、知識人の多くが日本の将来を危惧したようである。

しかし、私がここで言いたいのは、大宅さんほどテレビを愛し、テレビを活用したジャーナリストも珍しかったのではないかということだ。
あれは1964年(昭和39年)の夏だったか、当時、自民党の大実力者であった大野伴睦という政治家が亡くなった。大野は東海道新幹線の駅を地元の岐阜県・羽島市に誘致したと批判されていたが、これに関連して、大宅氏はテレビで「あんな政治家は早く死んでくれて、日本のために良かった」という趣旨の発言をした。
今ならそれほど問題にならなかっただろうが、大野伴睦氏が死んだ直後だっただけに、自民党・大野派の国会議員らが烈火のごとく怒り、「大宅を国会に呼べ!」などと大騒ぎになった。この時はテレビの担当者も連日大変だったようで、なんとか自民党議員らをなだめすかして事態を収めたようだ。

このように、大宅さんは新興メディアのテレビを活用して言いたい放題であったが、翌1965年(昭和40年)には、なんとテレビニュースのキャスター・司会者として登場したのである。あれほどテレビを「白痴化」の元凶だと非難していたのに、自ら番組の司会者になったのだ。ニュースキャスターだから、真面目なものと判断したのだろうか。
私はその時、フジテレビの新米社員で番組のAD(アシスタント・ディレクター)だったから、大宅さんの“付き人”みたいな形でずっとお世話をさせてもらった。番組は「大宅壮一サンデーニュースショー」と言って、毎週日曜日に生放送するものである。ニュース原稿はもちろん女子アナが読んで、大宅氏がいろいろ解説を加えるというものだ。
初めは、テレビを白痴化の元凶と決めつけた大宅氏だっただけに、非常に怖い人かと思って接したが、全くそうではなく実に優しい人柄であった。われわれスタッフに怒ったことは一度もなく、好奇心が旺盛な人だからテレビとはどんなものか楽しんでいる風情なのだ。 私はその時「この人は根っからのマスコミ人だな~」と思ったのである。(後編に続く)
 
 
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